名古屋高等裁判所金沢支部 昭和26年(ラ)6号 決定
抗告人は原決定を取り消す。石川県議会が昭和二十五年四月十四日なした鳥畠徳次郎を議長に選任する旨の議決の執行を、右議決無効の本案判決確定に至るまで停止するとの裁判を求め、その事由として、右鳥畠徳次郎を選任する旨の県議会の議決は無効であるにも拘らず、同議長が議長として事務を処理するときは、石川県民全体に不測の損害を与える虞があるから、抗告人は一県民として、右議決無効確認の本訴を提起したが、その判決の確定に至るまでその執行の停止を申立てたところ、原審がこれを却下したのは違法であるから本抗告に及んだというのである。
しかしながら、当事者間に具体的に権利義務について争があるわけではなく、一般に法の適用を確保し行政の公正を保障するを目的として、一般住民が裁判所に出訴し得るいわゆる住民訴訟は、地方自治法第二百四十三条の二の如き特別の定めなき限りこれを提起し得ないものと解するを相当とする。本件は抗告人が前記議決により具体的に自己の権利を毀損せられたというのではなくて、一県民として右議決の執行は議会の公正な運営に支障を与えるからその停止を求めるというのであつて、いわゆる住民訴訟に属する申立であるが、かかる場合に一県民として訴訟を提起し得る旨の法の規定なく、従つて執行停止の申立も許されないといわなければならない。原審が抗告人の申立を却下したのは相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし抗告費用は抗告人の負担すべきものとして主文の通り決定する。
(裁判官 観田七郎 吉村国作 村上久治)